研究概要 |
本課題は概略,わが国のスペイン語学研究に関してこれまで主としてわが国で蓄積された研究成果をテーマやキーワードごとに分類し,研究裸題・文法項目別の情報検索を可能にするデータバンクを構築することを当初の目的とするものである. 2年にわたる予備的研究の結果,スペイン語学研究の多くの問題は言語の地理的バリエーションを考慮することによって,スペイン語文法現象の本質をより正確に捉えることができるのではないかとの認識にいたった.本来のプロジェクトの目的からの逸脱を前提に,より学問的進展が望めると期待できる方向に軌道修正をすることになった. すなわち空間的・地理的パラメーターがどのように文法説明に関わっているのかを実地調査から得られたデータによって確かめ,それらを包括する方法論を追求する方向に研究の照準を合わせることにした. 最終成果報告書ではこの目的で実施したスペインにおける現地フィールドワークから得られたデータおよび分析をまとめた. これまで言語現象を地理的観点から扱ったものは,主に音声,形態面での研究が中心であった.語彙のバリエーションについても先行研究は少なくない.日本を拠点とする世界的プロジェクト「VARILEX(スペイン語の語彙バリエーション)」(http://gamp.c.u-tokyo.ac.jp/~ueda/varilex/index.html)などにより得られた成果もその一例である.しかしながら本プロジェクトが対象とするような「統語的・文法的」側面からの地理的バリエーション調査・研究はスペインを含めて類を見ない.本成果が文法研究に新たな視点,ベクトルを与え,ここに収められたデータや分析を出発点として,従来懸案となっているさまざまな個別の文法課題についてこれまでとは異なった角度から新たな成果が生まれることを期待する.
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