イタリアにおけるモダニズム文学の旗手とされるダンヌンツィオとピランデッロに焦点をあて、両者の作品を韻文と劇作という二つのジャンルを中心において分析する。これは単なるジャンル上の区別ではなく、そこに表れている時代精神と政治理念を分析するための戦略的分類となる。19世紀末から20世紀にかけて矛盾をはらんで展開していくイタリア社会と同様、閉鎖性と開放性の両極端を行き来し、最終的に均衡を見ることのなかった彼らの文学思想が内包する擬似的な政治思想を描き出し、それがムッソリーニの率いるファシスト党の理念を形成していた開放性と閉鎖性の弁証法と共鳴し、一種の政治的共犯関係を形成していたことを明示しようとするものである。 平成13年度は、ダンヌンツィオとピランデッロの詩作の分析研究および演劇作品を中心とした資料収集にあてられた。ダンヌンツィオの詩については先行研究が比較的豊富にあるものの、ピランデッロのそれについてはきわめて少ないので、一次資料の精密な「読み」が必要となり、現在はこの作業を進めているところである。
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