近代ロシアを代表する知識人の一人アレクサンドル・ゲルツェン(1812-1870)の思想は19世紀から20世紀のロシア思想に対して多角的な影響力を持ち、今日に到っている。本年度は彼の思想的著作活動のうち、1840年の活動を中心に考察した。その成果の一つが「ゲルツェンの見たチャアダーエフ」である。ここでは、ゲルツェンの同時代人であるチャアダーエフのカトリシズムに対するゲルツェンの批判的見解を紹介した。もう一つの成果「ゲルツェン『学問におけるディレタンチズム』覚書」では、ゲルツェンのヘーゲル哲学理解を分析し、ロシアにおけるヘーゲル哲学受容の一端を明らかにした。
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