本研究は苗瑶語とその近隣に話される少数民族言語を比較対照し、苗瑶語の祖語の音節構造、語の形態、句(phrase)の構造を解明する手がかりを得ようとするものである。平成13年度は、主として分析対象のデータの整理と基礎的分析を行った。データとしては、研究代表者が自ら調査した言語のほか、中国で出版された苗瑶語の文法研究を用いて、そこから本研究が対象とする文法特徴の整理を行った。その成果の一つとして研究代表者が2000年に調査を行った羅泊河苗語について、その文法特徴を整理したものを発表した。この言語は音韻的に祖語の特徴をよく保存している方言であるが、形態・文法面でも興味深い特徴をもつ。今年度の研究では、接頭辞の種類とその音韻的特徴を記述し、その機能の特定を試みた。それによれば、接頭辞には母音(V)のみによって構成されるもの、子音+母音(CV)によって構成されるものがあり、子音は両唇、歯、口蓋垂の閉鎖音がある。また、母音は後続の語幹の母音に調和する。接頭辞の機能としては、語彙の違いを示す弁別的機能、名詞であることを示す品詞識別機能、さらに動詞・形容詞を名詞化する機能を特定した。さらに、接頭辞によって名詞化された動詞・形容詞が名詞を修飾する構造に焦点をあて、修飾語順と可能な内部構造について記述した。以上のような記述により、苗語の接頭辞の機能を種類、名詞句の構造の解明を試みた。
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