本研究は、量、空間、時間のようなスケールを持つ対象がどのような形式で言語表現に対応するかを研究した。 時間のダイクシス「今ごろ」に関する解釈を記述するために、認知スケールとカウンターパートの概念が本質的に関わることを明らかにした。この結果を用いて、日本語条件文とモーダルの助動詞に関する新しい知見を得た。この結果をソウル大学言語学科コロクイアム、国際認知科学会で発表した。 形式名詞「トコロ」の場所用法、時間用法、反事実用法を統一的に説明する方法を研究した。トコロはそれがとる補部が持つインデクスのとる値を参照点として指定し、スケール上の位置を示す表現である。場所用法では、空間的位置を、時間用法では時間的位置をそれぞれ表す。参照点が発話時、発話空間と一致するときは、現在時、現実世界を表す。つまり、「xの前、後」「xの右、左」のような関係を表す表現における「x自体」を示すのである。これを条件の場合に適用すると、反事実性が説明できることを示した。以上の成果の概要をミシガン州立大学で開かれた第15日本語韓国語言語学会議、ウィーン工科大学で開かれた、ESSLLI(ヨーロッパ言語・論理・情報夏季講座)でのワークショップで発表した。 さらに、この参照点指示に関する表示を一般化することで量を表すスケール表現にも適用できることを示した。すなわち、「xより多い、少ない」における量の参照点を表す統語的位置があると仮定するとダケ、バカリ、ブンなどの量表現の用法を適切に表現できることを示した。
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