1 総論 研究代表者のこれまでの経験をふまえ、新聞記事テキストや文学作品を中心とする大規模な電子資料を利用して日本語の文法・語彙・音韻の諸事象の分析・考察を行った。 2 研究成果の発表 (1)公刊論文 今年度中に発表・執筆した論文のうち、電子資料から得られるデータを統計的に扱ったものとしては、現代日本語におけるサ変動詞の活用のゆれの様相を分析し、そこに音韻を始めとするいくつかの要因が複合的に関与していることを示したものと、形容動詞連体形における「な/の」の選択について分析し、意味的な要因の関与を論じたものとがある。また、日本語文法における大きな研究テーマであるモダリティおよび複合辞のそれぞれについて理論的な観点から考察した論文においても大規模な電子資料から得られる用例を活用し、文法の理論的研究においても電子資料が有用であることを示した。 (2)中国の日本語研究者に対する講義・講演 年度末には中国で日本語の研究・教育が行われている主要な大学4校(湖南大学、四川外国語学院、四川大学、大連外国語学院)において研究者(教師、大学院生)や学生を対象にした講義・講演を行い、本研究の成果を発表・紹介した。中国でも北京日本学研究センターでは日中対訳コーパスが作られるなど電子資料を使った言語研究が注目を集め始めているところであり、電子資料を利用することでどのような日本語研究が可能となるのかを研究代表者の具体的な研究事例を通して紹介した。
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