1 総論 前々年度・前年度に引き続き、日本語の大規模な電子資料を利用して文法・語彙・音韻に関わる諸事象の分析を行うとともに、これまでの経験と成果を踏まえて電子資料に基づく日本語研究の諸問題について一般的な見地から考察・発表を行った。 2 研究成果の発表 (1)公刊論文 本年度に出版ないし執筆した研究代表者の著書・論文は以下の通りである。 (a)『Per1プログラミング-テキストデータ処理の基礎-』(大阪外国語大学) (b)「コーパスによる文法の研究」(『日本語学』第22巻第5号) (c)「コーパス言語学の可能性と限界」(『日本学研究』第13期) (d)「現代語のモダリティ」(『朝倉日本語講座6 文法II』、朝倉書店) (a)は、テキストデータ処理に適したプログラミング言語Per1を使って電子媒体の言語資料をコンピュータで自在に処理するため技法の基礎について、プログラミングの知識・経験をまったく持たない研究者を読者として想定して解説したものである。(b)と(c)は、電子資料を使った日本語研究の意義や問題点を具体的かつ一般的な形で論じたものである。(d)は、昨今の日本語文法の研究において重要な研究テーマの1つと目されている"モダリティ"の概念の通説的な理解に含まれる重要な問題点について、電子資料から得られるデータを援用しつつ論じたものである。 (2)口頭発表 2003年11月に日本語文法学会第4回大会のシンポジウム「<周辺><例外>と向き合う」にパネリストとして参加した。「周辺性・例外性と言語資料の性格-その相関の考察-」というタイトルの発表において、言語現象の事例の周辺性・例外性の問題と研究対象とする日本語の資料との相関などに関する考察を述べた。
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