1.総論 日本語の電子資料を用いて文法を中心とする諸事象の分析を行うとともに、日本語研究における電子資料利用の諸問題について一般的見地からの考察を行った。それらの分析・考察の結果は論文・書籍・口頭発表などの形で発表した。 2.出版物 事例研究の論文としては、現代語におけるサ変動詞の活用のゆれの様相を分析し、音韻その他の要因の複合的な関与を明らかにしたものと、形容動詞連体形における「な/の」の選択における意味的な要因の関与を論じたものがある。また、日本語研究における大きなテーマであるモダリティについて理論的観点から考察した論文においても大規模な電子資料から得られる用例を活用した。 電子資料に基づく日本語研究の意義や問題点についての一般的な考察についても、2編の論文で述べた。 また、プログラミング言語Per1を使って電子資料を処理する技法の基礎を、プログラミングの知識・経験のない言語研究者に向けて解説した書籍を出版した。 3.口頭発表など 国内では、2003年秋に日本語文法学会大会のシンポジウムにパネリストとして参加し、「周辺性・例外性と言語資料の性格」という題名で発表し、言語現象の事例の周辺性・例外性と日本語の資料との相関に関する考察を述べた。 国外では、2002月秋に北京日本学研究センターで開催された国際シンポジウムにおけるパネルディスカッション「コーパス言語学の新展開」で「コーパス言語学の可能性と限界」と題した発表を行った。そのほか、中国の数大学において電子資料を用いた日本語研究の現状や意義に関する講演を行った。 また、2002年秋には北京日本学研究センター、同年冬には大阪大学文学部・文学研究科において、「電子資料と日本語研究」という題目の集中講義を行い、電子資料に基づく日本語研究の方法論や課題について講じた。
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