とりたて表現の数量的側面に関する振る舞いを記述し、この振る舞いを成立させている要因として、「体験vs.知識」という言語情報の区別を浮き彫りにした(「11研究発表」の欄の図書を参照)。そして、この振る舞いに関する日本語と中国語の共通点と相違点を明らかにするとともに、それらがとりたて表現だけでなく、他の表現にも並行的に観察されることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文1点目)。 次に、これらの共通点と相違点を説明できるモデルを考察した。具体的に言うと、この区別がとりたて表現だけでなく、さまざまな言語表現に共通して見られることを論じ、特に体験の関わる言語表現には、これまで考えられていない新しいデキゴトモデルが必要であることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文3点目)。また、それらのうち時間表現については、「情報のアクセスポイント」の観点から、特に詳細な論を展開した(論文4点目)。場所表現についても、モノとデキゴトに関する考察に基づき、詳しい論を展開した(論文6点目)。 さらに、「体験vs.知識」という区別が言語情報にとどまらない、人間のコミュニケーションに深く根ざしたものであることを論じた。具体的には、この区別が話し言葉・書き言葉という位相差や(論文2点目)、声質のような言語行動(論文5点目)に関与していることを明らかにし、これまでの言語研究やコミュニケーション研究が知識表現に偏って進展してきており、体験表現が不当に無視ないし軽視されてきていることを示した。
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