研究概要 |
音声・調音可能性ハイエラーキの実証的研究のために予備実験を含めて2回の実験を行った.被験者は次第に速くなるメトロノームを聞きながら,母音+12種類の子音の組合わせを発音し,それをテープに録音した.LL教室を用いることで比較的多人数(約40人)のデータを一度に集めることができた.現在データの分析を鋭意進めているが,かなり多量であるため発話タイミングの計測を半自動化するプログラムを導入し,分析作業の効率化を図っている. 分析においては,母音の開始時間と子音の開始時間を,それぞれメトロノーム音に対して相対的に表すことで,ミリ秒で表される絶対時間では捉えきれない調音運動の位相的側面を明らかにしようとしている.特にこの実験では,次第に速くなるメトロノームに合わせると,母音+子音の発音順序が子音+母音の順序に入れ替わってしまう現象(開音節化)に着目し,従属変数として入れ替わる瞬間のメトロノームの時間間隔を取り上げる.この手法によって,これまで分析が難しかった調音可能性の動的特性が明らかになりつつある. 音韻理論とのリンクは,雑誌論文8編の他にも,研究分担者が運営委員として参加した明海最適性理論ワークショップや,日本音韻論学会「音韻論フォーラム2001」などの学会,および各地の研究会で精力的に発表され,参加者との有意義な討論を経てさらに進展している.
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