今年度の研究計画に基づき、1 8月・2月・3月の3回会議を開催し、アイヌ語テキストの観察と理論的考察をめぐっての討論を行った。Westerstahl氏(海外共同研究者)は持病の悪化のため参加できなかった。 会議のなかでは、まず前年度に引き続いて、アイヌ語の副助詞のうちとくに量化表現に関わるものについて、その分布を量的に確認するとともに、鍵となる例文を約120例抽出した(前年度抽出済みのものを含む)。さらに、類似した構造による量化表現を持つ日本語とアイヌ語とを対照し、両言語の共通点と相違点とを観察した。 そのうえで、そうした分布や例文の解釈および日本語との異同を、量化子理論の観点から説明する仮説の検討を深め、事実をほぼ説明できる結論に到達した。 さらに、アイヌ語のその他の副助詞とくに取り立ての働きを持つものの意味・機能について、分布の観察・例文の抽出・日本語との対照を進めながら理論的説明の可能性を探り、研究代表者・分担者双方がアイヌ語の言語事実と一般言語学的理論についての理解を交換した。 2 研究チームをメンバーとするメーリングリストを開設し、海外共同研究者を含め遠隔地での討論を継続した。 3 1・2の討論の成果として、研究発表欄に記載の諸論文を執筆・公刊した。
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