研究課題/領域番号 |
13610666
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西山 佑司 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (90051747)
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研究分担者 |
熊本 千明 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (10153355)
小屋 逸樹 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (80234904)
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キーワード | コピュラ文 / 措定文 / 倒置指定文 / 変項名詞句 / ウナギ文 / 分裂文 / 指示的名詞句 / 非指示的名詞句 |
研究概要 |
今年度は、本研究の最終年度であり、これまでの研究成果を総括し、コピュラ構文のもつ多様な意味構造と情報構造を明らかにした。具体的には以下の通りである。 1.コピュラ文には、「AはBだ」/「BがAだ」"A is B."といった形式があるが、コピュラ文における名詞句がもつ指示性・非指示性という観点から、名詞句(AおよびB)の文中での意味機能を徹底的に分析した。この分析にあたって、もっとも重要な役割を果たすものは、非指示的名詞句のひとつのタイプである「変項名詞句」という概念である。研究代表者は、この概念を自然言語の意味論のなかに新しく導入することによってこそ、コピュラ文の意味と構造にたいしても、さらには、一見コピュラ文とは関係ないように思われる変化文(「Aが変わる」)や存在文(「Aがいる/ある」)の意味と構造にたいしても、新しい光を投げかけることができるという仮説をたて、それを具体例で実証した。 2.日本語学・国語学でもっとも議論の多い「象は鼻が長い」構文の意味構造を、名詞句の指示性・非指示性を考慮したコピュラ文の意味構造の観点から再検討した。 3.「象は鼻が長い」構文と類似している「鼻は象が長い」構文や「魚は鯛が良い」構文と「象は鼻が長い」構文との本質的な違いを解明した。 4.料理屋での発話「ぼくはウナギだ」に見られるいわゆる「ウナギ文」を、コピュラ文のもつ意味論と語用論の接点領域の問題として再構築した。つまり、「ウナギ文」は、全体としては措定文ではあるが、属性自体が「ぼくが注文する料理」のような「隠された変項名詞句」を含む倒置指定文の構造を有しているという仮説をたて、それを具体例で実証した。 5.「太郎は画家だ」のような純粋な措定文は、「太郎は、職業は画家だ」から派生されたウナギ文と本質的に異なることを論証した。 6.分裂文とコピュラ文の関係について、日本語、英語、ドイツ語の例で徹底的に分析した。
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