研究概要 |
日・英語の様々なタイプのコピュラ文について、考察を行った。コピュラ文の分析には、名詞句がそれぞれの位置において果たす機能を正確に把握することが必要である。「変項名詞句」の概念は、指定文に典型的に現れる非指示的名詞句の特徴を説明するのに、きわめて重要であることが示された。 西山(2003)は、主として日本語のコピュラ文について、次のような点を論証した。 (1)「AはBがC(だ)」という形式の構文の曖昧性は、指定の概念の有無という観点があってこそ初めて、十分な説明が可能となる。 (2)「AはBだ」という形式をもつ措定文の中には、B自体に指定文構造が内蔵しているものがある。 (3)コピュラ文と存在文には、どちらも名詞句の指示性・非指示性によって下位区分がなされるという点で、相関性がある。 熊本(2001,2003,2004)は、変項名詞句の概念を用いて英語のコピュラ文・存在文を分析し、次のような結論を提示した。 (4)it分裂文とリスト存在文は、どちらにも変項名詞句の概念が関与しているという共通点がある。前者は変項を埋める値を指定するもの、後者は可能な値の存在を述べるものである。 (5)反事実仮想を表わすコピュラ文の入れ替わりの読みは、名詞句の属性的用法ではなく、変項名詞句の概念によってのみ、適切な説明がなされる。
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