研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、(1)基本的な形式名詞の用法に対し、それらの用例が、基本的な辞書的意味と統語的位置との相関で説明できることを示すこと、(2)基本的な辞書的意味とその比喩的な拡張の仕方に法則性があること、その拡張と統語的性質に相関があることを示し、いわゆる「文法化」の概念をより精密化することである。初年度は語彙部門と統語部門とのインターフェイスを整備する作業を主に行った。特に「ところ」に関して、その辞書的意味をスケール上の「位置」とし、場所化・部分化・系列化・時系列・反事実的条件文の帰結という用法が、この辞書的意味と問題となるスケールの同定、統語的環境からどのように導けるかをメンタルスペース理論におけるスペース間マッピングとスペース融合を応用することで示した。次年度はこの研究に関して「ところ」の辞書的意味を「AのBである部分」という二項述語として再定式化することで、この形式名詞のすべての用法が説明できることを示した。最終年度は、形式名詞「コト」が「名詞のコト」という表現形式をとった場合の用法を統一的に説明することを試みた。名詞に後続する「のコト」に関しては、動詞との共起関係が義務的なものと随意的なものがあり、それぞれの意味的特徴をもつ。その意味的特徴は「名詞」「の」「コト」の意味から構成的に導出されることを示した。「の」は属格「コト」は「事実」「出来事」を意味し、「名詞のコト」は「名詞が指示するものに関するある出来事あるいはすべての出来事」という構成的意味が導かれる。そして「名詞」が指示的である場合は「のコト」はその指示名詞の属性の集合と等価となり、これは結果としてgeneralized quantifierと同じタイプとなる。「のコト」をこのように捉え、さらにmodel theoretic semanticsの理論的枠組みに従うことにより、随意的な「のコト」の意味的/統語的特徴を説明できることを示した。
すべて 2003 2002 2001
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (10件)
日本語学 22巻10号
ページ: 6-11
日語日文学研究 第45輯
ページ: 1-7
The Conference Handbook of the Second International Conference on Discourse and Cognitive Linguistics
ページ: 593-604
NIHONGOGAKU VOL.22 NO.10
NITIGO NITIBUNGAKUKENKYUU VOL.45
The conference handbook of the Second Seoul International Conference on Decourse and Cognitive Linguistics