本研究は将来ムンダ語語源辞書を編纂するために、これまで刊行されているムンダ諸語の辞書をデータベース化することにある。研究代表者である長田は、すでに平成10年度から平成12年度にかけて、ムンダ諸語の一つであるホー語の辞書をデータベース化して、それを報告書としてまとめている。今回は、ムンダ語をとりあげ、ムンダ語の研究の金字塔とも言うべきエンサイクロペディア・ムンダリカをデータベース化することを目標とした。ところが、16巻にもおよぶエンサイクロペディア・ムンダリカの情報をすべて打ち込むためには、本研究の補助金だけではまかなえない。そこで、日本に滞在する唯一のムンダ語話者であるマドゥ・プルティ氏に、エンサイクロペディア・ムンダリカから、抜き出して語彙を選定していただいて、打ち込んでいただいた。 こうしたデータベース化に加え、本研究の目的が別にある。じつは、ムンダ語は名詞と動詞の区別がつかない言語として有名である。そこで、エンサイクロペディア・ムンダリカの単語欄に書かれている品詞情報を打ち込み、すべての単語が名詞としても、動詞としても認められているのかどうかを、本データベースを使って検証した。その結果、単語に名詞の意味しかないものが772、単語に動詞の意味しかないものが1099、単語に名詞と動詞の両方の意味が掲載されているのが1953という結果を得た。このことから、従来言われている、ムンダ語は名詞と動詞の区別のない言語であるというのは、エンサイクロペディア・ムンダリカの単語情報からは言えないことがあきらかとなった。なお、打ち込んだものを打ち出して、報告書としてまとめているので、詳細はそちらを参照のこと。
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