本年度は、マイクロフィルム・リーダー・プリンターを購入し、写本のマイクロフィルムを入手することから、始められた。中世のギリシア語アルファベットは、読むのにいくらかの習熟を要し、現在、訓練中であるとともに計画進行中である。その為、研究計画そのものには、いくらかの遅れが出るものと推定される。 研究計画には、日本の西洋古典学に、ある種の変化をもたらす、という狙いもあったが、こちらの方は、極めて順調に進んでいる、と自負できる。まず、13年11月8日に北海道大学で、「日本の文献学-現状と展望」と題したシンポジウムを開いた。大学の援助もあり、学士院会員の久保正彰氏、京都大学教授のE.Craik氏らを招き、日本の西洋古典学がこれからどのように進歩してゆくべきか、について、極めて真剣な討議がなされた。さらに、このシンポジウムの成果は、全国的に知れ渡り、14年の日本西洋古典学会で、全国規模で、同じ問題を再度検討することとなった。そして、パネラーとして、安西が選ばれた。さらに、個人的にも、日本の古典学を現在担っている数名のものが、安西と同方向の研究を開始するとの決断をしたと表明している。これは、いづれ、研究の進展にともない、共同研究に発展するものと期待できる。安西個人の研究の進展は、計画よりも遅れるとの見通しを得た一年であったが、古典学全体の規模で考えるならば、予想以上の成果が得られたと判断する。
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