本科学研究の目的は、課題に掲げられた具体的研究の実現(「ヘカベー」校訂本の完成)をめざす、ということよりも、むしろ、日本の西洋古典学界に属する研究者たちが、欧米のClassics研究の核心をなす、古典本文批判作業(例えば、研究課題に示されたような作業)の一翼を担うだけの研究段階に達しているかどうか、また一般にそういった作業を日本古典学会内の必須の研究と考えるべきかどうかについて内外に問いを発することであった。3年間の研究の結論を言えば、どちらもイエスという評価を得た、と判断する。「フィロロギカ」という研究者集団結成に至る「文献学研究会」を13年秋以来、6回開催した。そのうち4回には、のべ5名の欧州籍研究者が参加した。そのすべてを組織・司会し、そのうち4回については自ら研究発表を行った。いずれの会でも、欧州の研究者と連絡を取りながら(作業が重ならないようにしながら)、安西を作業を続けるべきだし、広く学会全体でコミットしてゆきべきだ、という評価を得た、と判断する。
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