1.研究目的:讃美歌の普及が中国、日本、韓国の近代歌謡形成の基礎となったと仮定し、各国で讃美歌の影響から近代歌謡が形成される過程を明らかにすることを最終目標としている。今回は主として韓国について明らかにし、中国に関することと、日中韓の比較は今後の課題として残された。2.韓国における讃美歌の普及と近代歌謡の形成:当時アメリカは大衆的通俗的讃美歌集の大量出版時代を迎えており、韓国の初期讃美歌はこういった後の大衆歌謡の萌芽といえるアメリカの通俗讃美歌の影響を強く受けている。3.韓国における讃美歌普及の特徴:医療伝道が韓国では極めて有益に機能し、その際、讃美歌がとても人気があった。また、病院に助手として派遣されたミッション・スクールの生徒は病院での礼拝を助け、医療伝道と学校教育との間に連携が保たれ、宣教が有効に機能し、それによって讃美歌も普及した。4.韓国における讃美歌の特殊な機能:文字が読めない婦人たちが讃美歌を暗唱することで文字を覚え、讃美歌集は文字を読むことを覚えるためのテキストとなった。5.韓国における讃美歌の普及の仕方:宣教師がスクロールと読んでいる讃美歌を大きな文字で書いた全紙を目の前に掛けて歌唱した。6.讃美歌に関する分業:現地人に讃美歌の歌唱を指導する仕事を担ったのは主として女性宣教師で、これに対して讃美歌集の編纂にたずさわったのは主として男性宣教師であった。7.韓国での讃美歌集の出版活動:最初の15年間で讃美歌集は急速に普及し、例えばメソジスト派では1905年までの9冊の讃美歌集を出版し、最初は27曲であったものが9冊目では183曲に拡大されていることは讃美歌普及の急速を示す一つの指標と見られる。長老派とメソジスト派の讃美歌集編纂努力はそれぞれ影響を与えながら、最終的には、教派合同で1908年に出版された一致賛美歌集「讃頌歌」に結集される。
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