この論文は、明治初期のバプテスト宣教師夫人で、根室教会設立者であるハリエット・カーペンターの書簡を読みながら、彼女が眺めた日本女性像から、異文化、近代文明に接して自立を模索する、通常声を与えられることのない日本女性の声を聞き取ろうとするこころみである。そこで重要となるのは、女性が宣教師として送り出されるようになったアメリカ側の時代の変化、そしてキリスト教思想を受け入れる明治日本のおもわく、特に北海道の地域条件であり、とりわけカーペンター自身の女性観である。論文では、カーペンターの教会に集まる女性についての記述を男性についてのそれと比較し、またカーペンターの他の文献における女性観をも参考にしながら、キリスト教が明治政府の近代化戦略に荷担する形で、富国のための戦士を送り出す働きをし、カーペンターも保守的な女性観を表明しているのにもかかわらず、日本女性が彼女の体現する近代的女性観、彼女自身の個人的意志力から、暗黙の内に女性の自立の意味をくみとっていったと論じている。
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