ゲームソフトやサイバーフィクションなどの、<デジタル、フィクション>(=コンピューターなどのデジタルメディア技術に媒介されて成立するフィクション)を研究対象に、<情報記号論>という新しい理論的枠組みを導入しつつ、<メディアテクスト分析>の新たな方法を確立することをめざす本研究は、今年度まず、分析作業のフレームとして「デジタル、フィクション研究グループ」を立ち上げた。共同研究作業は、1)フィクションの類型化と分析モデルの抽出、分析プログラムの作成、2)デジタル・フィクションの理論と分析方法のモデルの探求を課題として進められた。そのうち1)の作業はおもに「物語論(ナラトロジー)」の理論的成果をいかにデジタル・フィクシヨン研究に応用するかという角度からすすめられ「物語における抽象と具象」の理論として練り上げられた。2)については、ジュネットおよびグレマスの理論をどのように視覚モデルとして可視化し、物語生成の装置としてプログラム化しうるのかという角度から生成モデルの開発が行われた。またハイパーテクスト作品の分析を通して、ハイパーテクスト化と物語生成の複数化の関係を理論化する作業が進められた。これらの成果は、国際シンポジウム「日仏メディオロジー討議」において提示された。また研究代表者による国際哲学院での共同研究、パリ第7大学での客員講義をとおして、デジタル・メディアが提起する現代的ミメーシスに関する仮説が提示された。
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