研究概要 |
研究計画初年度の平成13年度には,「15世紀イタリアの修辞学思想」というテーマ全体の概観とアリストテレス主義を背景としたレオナルド・ブルーニの翻訳論の研究とを行なうこととし,この目的のためにイギリスのロンドン大学ウォーバーグ研究所および大英図書館へ出張して文献の調査・収集を実施した(平成13年9月3日〜18日)。また,複写の許されない文献を転写するために補助金の一部(設備備品費)を用いてノート型パソコンを購入した。 上記の2つの図書館では,日本の図書館では容易に参看できない多数の一次・二次文献に当たったが,特に重要な文献は複写・転写して入手した。複写したものの例は,E・ガレンやCh・B・シュミットのルネサンス・アリストテレス主義に関する研究論文,モーラー校訂のゲオルギウス・トラペズンティウスのテオドロス・ガザに対する論争文などである。パソコンを用いて転写したものの例は,アルフォンソ・デ・カルタヘナのブルーニに対する長大な論争文,また16世紀のジョアシャン・ペリオンがアリストテレスのキケロ主義的翻訳法について書いた序文などである。 以上の調査の結果,ブルーニがアリストテレスの『ニコマコス倫理学』のラテン語訳に付した「正確な翻訳法について」をめぐる論争に参加したさまざまな人物(アルフォンソ,ガザ,ゲオルギウス)についてより豊かな理解ができるようになった。また,ルネサンスのアリストテレス主義の潮流を背景とした15世紀イタリアの修辞学思想というテーマ全体についてより広く明瞭な見通しができるようになった。
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