研究概要 |
研究計画2年目の平成14年度には,前年度に引き続きレオナルド・ブルーニの翻訳論の研究,および今年度新たにアンジェロ・ポリツィアーノの弁証術論の研究を行なうこととし,この目的のためにロンドンの大英図書館およびロンドン大学ウォーバーグ研究所で文献の調査・収集を実施した(平成14年4月19日〜5月4日)。 上記の2つの図書館では,日本の図書館では容易に参看できない多数の一次・二次文献に当たったが,特に重要な文献はノート型パソコンで転写して入手した。たとえば,ブルーニがその翻訳論「正確な翻訳法について」で引用しているアリストテレス『ニコマコス倫理学』の章句のさまざまなラテン語訳(中世の「古い」訳,ブルーニ自身の訳,15世紀のヨハネス・アルギュロプロス訳,16世紀のジョアシャン・ペリオン訳)を15-16世紀の刊本から,また,『ラミア』以外のポリツィアーノの弁証術論(「スウェトニウスへの序文」「カルミデスへの序文」「弁証術への開講演説」「弁証術」それぞれの全文)を1498年アルド版『全集』から転写した。 以上の調査の結果,ブルーニの翻訳法の理論と区別された実践を他のラテン語翻訳者の実践と比較して考えられるようになった。また,ポリツィアーノの『ラミア』を同じ著者の他の弁証術論の文脈,の中に置いて考えられるようになった。 平成15年度には,ピコとバルバロの哲学・修辞学優劣論争の研究へと進み,かつ,ブルーニ,ポリツィアーノの研究とともに,それぞれの成果を個別の論文として発表していく予定である。
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