本研究の目的は、19世紀初頭におけるロバート・オーウェンのニューラナークの実験から20世紀初頭のエベニーザー・ハワードのレッチワース田園都市の建設にいたるユートピア都市共同体の系譜を研究対象として、イギリス社会主義運動および田園都市運動が千年王国主義などの宗教的メカニズムに裏打ちされていることを検証することにある。 平成13年度においては、主としてオーウェンの世俗共同体とは何かという課題について考察した。ニューラナーク時代に執筆されたオーウェンの資料を精読し、オーウェンの共同体であるニューラナーク紡績工場が千年王国の世俗化したものであることを、アメリカのシェーカー共同体との比較対照して検討した。平成13年7月31日より8月22日までは、オーウェン共同体についてはニューラナーク、ハワードの田園都市についてはレッチワースおよびウェリン(いずれも連合王国)において現地調査を実施し、さらに日本では入手不可能な文献資料の収集にあたった。 平成14年度においては、主としてハワードの田園都市の系譜について研究した。田園都市の建設までの経緯だけではなく、田園都市がいかなる思想背景のもとに構想されたかに焦点を当てて研究を進めた。平成14年7月31日より8月15日まで、ハワードの田園都市についてはレッチワースおよびハムステッド田園郊外(いずれも連合王国)、ルドゥーの王立製塩工場についてはアルケスナン(フランス)において現地調査を実施した。特にレッチワース市立図書館の助力により「ハートフォードシャー・カウンティ・アーカイヴ」所蔵の貴重な資料を利用することができた。 2年間の研究を通して、イギリス社会主義運動および田園都市運動が千年王国主義などの宗教的メカニズムに裏打ちされていることを検証することができた。
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