十四年度は収集した資料の整理と分類を行い、特に中国・台湾・香港の漫画研究・漫画批評に関する文献を整理、翻訳作業を行った。 とりわけ大きな成果としては、テキストの作成が挙げられる。報告者が全学教育で行っている「サブカルチャーの世界」という授業で使う為、漫画に関する総合的な研究をまとめた教科書を作成した。『漫画学入門』という題のテキストであるが、中には「漫画の歴史」、「漫画作家紹介」、「作品研究」、「マンガの表現」、「アメリカン・コミックについて」、「中国漫画について」等の章を設け、解説を行った。これは従来の漫画研究では足りない部分を補う為の基礎作業であり、これによって、漫画文化研究がようやく途についたといえるのである。 また、2003年3月に行われる「アジアINコミック 2003」(国際交流基金アジアセンター開催)というアジアコミックのフォーラムでは、中国漫画に関するパネリストとして招かれることが決まっているが、ここでは中国大陸での「新漫画(日本生まれのストーリー漫画を中国ではこう呼ぶ)」の発達について紹介する。こういった一連の活動は、研究にとっても不可欠であり、とりわけ中国の作家や編集者、漫画学校の校長等と交流できることは、これからの研究にとって有益であり、大きな成果が得られるものと確信している。 今後は台湾漫画研究に取り組む為、今年は台湾にいって、研究者、編集者との交流を行い、台湾漫画の動向と出版状況を調べ、作家や作品のデータ収集を行い、漫画産業のありさまを調査し、日本との出版業界の違いなどについても調べることとするが、その計画を立て、各学生に分担させ、作業を行う予定である。 これまでの成果をふまえ、15年度は台湾・中国での漫画批評・評論を各雑誌から集めて翻訳し、本として纏める作業を行うこととする。
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