今年度は本研究の第二年次にあたり、昨年度以来続けてきた研究対象および研究方法についての基礎的調査を継続するとともに、その成果に基づいて研究対象を選定し、それらについての具体的な検討を開始した。基礎的な作業に関しては昨年購入したCD-ROM検索ソフトを有効に利用するために必須となるコンピューターを科学研究費で購入し、作品の措辞・用語的な調査を進めた。また原典校訂本・注釈書等を用いて代表的な作品についての文献学的調査を継続するとともに、様々な文芸様式に関する研究文献を調査し、各文芸様式における文体論的特徴を検討した。この過程と平行して、本研究に必要となる研究文献につき、購入可能なものを科学研究費を用いて購入し、また国外・国内の研究旅行を実施して他研究機関が所蔵する文献調査と必要文献の複写・収集を行った。以上の基礎的な作業に基づいて具体的な研究課題を設定し、代表的な個別作品について各文芸様式における文体論的特徴の観点から検討を行った。ギリシア文学の分野に関しては英雄叙事詩の様々な文体論的特徴のうち、とくに『オデュッセイア』後半において主人公が語る偽りの物語に見いだされる叙述技法に注目する研究を進め、他方ではエレゲイア詩および抒情詩における叙事詩的叙述技法の影響を検討する作業を行った。ローマ文学の分野に関しては、共和制期からアウグストゥス時代にかけての諸文芸様式に属する代表的な韻文諸作品について、特に修辞理論および文体上の諸概念との密接な関係に注目して考察を進めた。その成果の一部として、研究代表者大芝芳弘による論文「カルウゥスとカトゥッルス(2)-カトゥッルス第50歌-」が出版された。さらに、ギリシア文学とローマ文学の両分野にわたって、次年度における最終的な研究成果発表へ向けて本研究の進展についての計画に検討を加え、新たに必要となる研究文献についても調査した。
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