3ヶ年計画で行われた本研究の最終年度は、研究のまとめを中心に下記の研究を実施した。 1 関係文献・史料の補充的収集 (1)国立国会図書館を主に利用して、関係文献の補充的収集を行った。 (2)近世公事宿・郷宿関係史料を、主として仙台藩、高田藩、甲府幕府領を対象に収集した。 (3)明治初年の民事訴訟及び訴訟支援者の実態を示す史料を探求した。 (4)明治前期の代書人・代言人及び代人に関する史料を、民事判決原本をも含め収集した。 2 史料分析、翻刻、検討及び得られた知見 (1)これまでに収集した近世公事宿・郷宿関係文献・史料を分析し、それが通説的理解と異なり、民事事件のみならず刑事事件にも様々な形で関与していることが明らかとなった。 (2)明治初年の江戸商人と秩父郡(現埼玉県)商人間で生じた金銭訴訟をめぐる新史料を翻刻・分析し、約1年間の訴訟期間中、秩父郡の商人は江戸の公事宿や岩鼻県(現群馬県)役所近辺の郷宿に計205泊していることを確認した。その費用はおそらく8両余となり、同道した関係者の分も含めると、この訴訟に費やされた時間と費用は膨大なものに登ることを具体的に明らかにした。 (3)明治前期の代言人が刑事訴訟に関与できなかったことの理由として、通説ではそれが慣行だったからといわれているが、近世及び明治初年の訴訟支援者は法廷外では刑事事件にも相当程度関与しており、それは政策的に導入された結果であることを見通すことができた。 3 研究のまとめと報告書の作成 以上のように行われた研究をまとめて報告書を作成中であり、近日中に提出予定である。
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