研究課題/領域番号 |
13620003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 達夫 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (30114383)
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研究分担者 |
瀧川 裕英 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (50251434)
石山 文彦 大東文化大学, 法学部, 教授 (80221761)
桂木 隆夫 成蹊大学, 法学部, 教授 (70138535)
野崎 綾子 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 助手 (40323620)
大屋 雄裕 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00292813)
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キーワード | 公共性 / 公共圏 / 市場 / 多文化主義 / 文化 / 生命倫理 / 情報化 / 公共的正当化 |
研究概要 |
1.公共性概念の他者志向的再編 井上報告は、従来の公共性理解を支配した領域的公共性・主体的公共性・手続的公共性の諸理論を批判した上で、公共圏の重層的多元化を最も的確に捉えうる公共性概念は、自己と他者との間の「視点の反転可能性」を基準とする公共的正当化要請であることを論証し、本共同研究を総括する理論的視座を提示した。 2.市場と公共性 桂木報告によれば、市場を多様な生活価値の交流と創発の場と捉えることで、かかる目的の達成が市場経済に伴う貧富の差を正当化しうるとする。また、この目的にとって、制度としての市場の健全性を維持するには、効率性と多様性とのバランスが公共的観点から模索されねばならないことが指摘された。 3.社会の多元化 石山報告は、自由や民主主義という普遍的理念と多文化主義の理念との間に生じるジレンマに関して、普遍的価値とその具体的意味や実現方法における多様性の承認により、この問題の解決を試みた。また、集団的自己決定の価値と体制の不正度の比較によって、実践的介入における一定の指針が得られることが報告された。 4.権利概念と公共性 大江報告では、豊かな価値判断の「原資」への権利として文化を捉えることで、文化に対する公共的支援が正当化されることが指摘された。 5.生命倫理と自己決定権 奥田報告は、各国の保健医療制度改革における公私機関の役割分担再編の検討を通じて生命倫理領域における「公共圏の重層的多元化」状況を確認した。また、この問題へのドウォーキンの論考を批判的に検討し、人間存在の構造の「重層的多元化」をふまえた公共性概念の構造化の必要を指摘した。 6.情報化と社会変容 大屋報告は、他者に向けて言説を発表する力が情報化の進展によって広く「普通の人々」にもたらされた状況を、デジタル・エンパワメントとして位置づけたうえで、それが既存の社会運営構造に機能不全を起こす可能性を指摘した。
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