(1)2001年7〜8月にポーランド(ワルシヤワ)を訪問し、全国裁判評議会、最高裁判所、ワルシヤワ管区裁判所、全国裁判登記所、裁判官団体「ユスティチア」、憲法法廷、全国法律顧問評議会、司法省司法研究所、科学アカデミー法学研究所で聴き取り調査を行なった。 (2)その結果として得ることのできた主な知見は、次のとおりである。 a.裁判官人事制度の運用状況を、修習生や判事補を採用し裁判官候補を推薦する側の管区裁判所と、最終的に1名に絞る全国裁判評議会の側の双方から明らかにすることができた。キャリア裁判官コース以外の道も開かれているとはいえ、このコースが中心となる運用となっていることを確認できた。 b.現行制度を法曹一元的方向に改めようとする司法省の改革構想について、裁判官の間にも賛否両論あり、当面実現が見送られた背景には、キャリア裁判官制度そのものの擁護論と、法曹のあいだの待遇の差が大きいことを背景とする時期尚早論とがあることが明らかになった。 c.弁護士会は強い自治権を享受しているが、その結果、弁護士の採用が極めて閉鎖的に行なわれているという評価が定着していることが明らかになった。 d.裁判所への財政資金投入の水準に大きな影響を与える通常裁判所予算の編成のあり方をめぐる実態と論争状況について、予算編成経験者である兀司法大臣と論争の一方当事者である全国裁判評議会からの聴き取りをつうじて、ある程度明らかにすることができた。 (3)2002年2〜3月に、別の研究資金を用いてロシア(ウラジヴォストーク)を訪問し、沿海地方裁判所、同仲裁裁判所、同検察庁、同弁護士会幹部会、ピェルヴァヤ=レチカ地区裁判所、法律事務所、極東国立大学法科大学などにおいて、聴き取り・資料蒐集・裁判傍聴を行なった。
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