ドイツの憲法上の所有権保障理論は、連邦憲法裁判所の1981年の「砂利採取決定」によって根本的な転換を遂げた。連邦憲法裁判所は、戦後30年間にわたって、連邦通常裁判所および連邦行政裁判所が作り上げてきた所有権保障理論-それはしばしば「広い」収用概念としてくくられてきた-を否定し、基本法第14条の規定に忠実に「狭い」、ないし「形式的な」収用概念を再び導入した。その結果、これまで基本法第14条第3項の収用の領域に属すると考えられてきた問題が、基本法第14条第1項第2文の所有権の「内容規定」の問題として捉えられるようになった。そしてその「内容規定」が、所有権者の法的地位に根本的な侵害を加えたとしても、それは「収用」の問題ではなくてあくまで「内容規定」の問題とされることになり、被侵害者に課せられた負担を軽減するために、場合によって「内容規定」の枠内で補償ないし金銭的調整が与えられることになった。それが、「補償義務を伴う(entschadigungspflichtige)」あるいは「調整義務を伴う(ausgleichspflichtige)」内容規定と呼ばれる制度である。この制度は、連邦憲法裁判所の判例に牽引されつつ顕著な展開を遂げ、現在、所有権保障理論の中でも最も注目すべき論点となっている。憲法問題としては、この調整義務の要件・効果をどのように規定しておくべきか、ということが、連結条項や救済条項との関係で議論の焦点となっている。
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