第2年次の研究計画に従い、東南アジア諸国を中心に課題の研究を深めるとともに、地域を南アジアと東アジアにも広げた。具体的な検討課題としては市場の競争システムを整序する競争法とその組織的側面を規制する会社法を考えているが、競争法に関しては、東南アジア諸国の競争法の生成と発展について概観するとともに、その成果を2003年1月北大日韓経済法研究会(ソウル)で発表を行った。 また中国、南アジア地域の競争法の検討も開始し、経済自由化が急速に進行しているインドで新しく制定された「競争法」について、進行中の会社法改革の調査も兼ねて現地調査を行った。会社法に関しては、会社法研究の中心テーマとなりつつある企業統治に関する理論的研究を行うとともに、東南アジアおよび南アジアでの関連資料・データを収集中である。 開発法学の理論的側面については、「法整備支援」との関連で重要な問題である法の移植可能性をめぐる問題について、法を「規範」、「制度」および「文化」の3つのレベルで定義することにより、この問題について有効な議論が可能であると考え、これに関するモデルについて、アジア経済研究所および九州大学のセミナーで報告を行い、法実践の場である「法整備支援」との架橋を試みた。この成果は近く公表される。 また、アジアにおける法のあり方との関係で、「アジア型資本主義」ないし「共同主義型」資本主義という概念を設定し、それが1997年のアジア経済危機以降、どのような変容を迫られているかについて、東南アジアを中心に、政治、経済および社会という3つの「場」における法のあり方との関係で分析し、その成果を公表している。 さらに、統治構造をめぐって「人権」規定をどう理解するかは重要な問題であるが、インド憲法に則して「基本権」と「国家政策の指導原則」を「人権」として統一的理解の可能性を示唆する論考(共著)を公表している。
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