1 無縁墳墓改葬公告について 平成11年5月から平成14年3月までの無縁墳墓の改葬(「無縁改葬」と略)公告のデータベース化を完了した。データは、(1)公告の日時、(2)無縁改葬を行う場所(住所)、(3)墓地の名称、(4)死者の名前(あるいは墓地使用者の名前)、(5)無縁改葬を行う人、(6)無縁改葬の理由、等であり、無縁公告の「公告」全文もデータベースに収録した。次年度に平成14年度分を入力し、最終的な分析を試みたいが、現在のところ次の傾向が窺えるのではないかと思う。(1)無縁改葬の事由として、道路工事などの工事関係によるものが多いが、次第に「墓地の整理」を理由にした改葬も増える傾向にある。(2)公告の記載事項である「死者の名前」が不明で「不詳」と記載される事例が多い。(3)土葬墓地から火葬へと葬法が変化する中での改葬公告、あるいは墓地を廃止に伴う改葬公告など、予想しなかった事例もあり、今後より詳細な分析が必要となってきた。 2 「無縁墳墓改葬公告」事例研究 無縁墳墓改葬公告を見ていると、この公告だけではその実態が見えにくいものが多い。「屋敷墓」の改葬公告(徳島県)、墓地廃止に伴い改葬公告(三重県)、土葬から火葬へ変化するなかでの改葬公告(奈良県)等の事例についてその経過を含めてその実情について調査を始めた。 3 金沢市営野田山墓地の調査 加賀藩の墓地として出発した野田山墓地は、古い伝統がある墓地であるために無縁墳墓が増加し、金沢市はその環境整備を行い、現在でもその作業が続いている。その手続きは広大な面積を有する墓地の整備事業のモデルとも言えるものである。この環境整備(無縁改葬)事業を実証的に明らかにするために、無縁墳墓を特定するために準備を進めている区域を中心に無縁の可能性のある墳墓(立て札を立てた墳墓)を特定した。平成14年はある墓地区画な墳墓のデータを整理し(戒名・建立年などの墓標に刻まれている文字情報)、1000基を超える無縁墳墓のデータベース化が完成した。今年度はこのデータの分析を試みたいが、どのような過程で無縁化していったのか、その事例研究も検計対象にしたい。
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