研究概要 |
本研究成果は3つの柱から成り立っていた。第一は、無縁墳墓改葬制度についての分析である。ここでは、(1)無縁墳墓の概念、(2)無縁墳墓改葬の制度史、(3)平成11年5月から平成16年3月までのほぼ5年間の官報に掲載された無縁墳墓改葬公告についてデータベース化を行った。この期間の公告件数は1,125件である。また、無縁墳墓改葬公告に掲載された墓地に実際行き調査を行った事例についても報告している。手続きの簡素化により、墓地使用者の権利や死者の尊厳性は護られているのか、多くの問題点も残している。無縁墳墓改葬が実際にどのように行われているのか、今後も引き続く調査を実施する必要があるだろう。 第二は、野田山墓地の無縁墳墓の改葬に関する実証的研究である。ここでは、石川県金沢市の野田山墓地における無縁墳墓の改葬事情(墓地の整備事業)の実態について調査を行った。野田山墓地は、領主前田家の墳墓地であったが、そこに家臣団が埋葬されるようになり、さらに町人階層も埋葬されるという壮大な規模の墓地である。金沢市による墓地の整備事業は平成2年から始まったものであるが、現在でもまだ道半ばにあるが、全体の4割程度が無縁墳墓となっている。この金沢市の整備手続き・方法は、行政による墓地整備事業の一つのモデルであるといっても良いだろう。 第三は、愛媛県周桑郡丹原町における墓地(無縁墳墓)に関する意識調査である。いわゆる過疎農村のおける墓地の継承に関しての意識調査である。アトツギの不在による墓の継承の危機意識がどのようなものであるか、調査者の意識はそこにあったけれども、必ずしも特徴的な結果が出てきた訳ではない。この調査は、丹原町の老人連合会に委託して調査を実施したが、回答者がすでに承継者を確保している高齢者が多かったのがその理由である。しかし、潜在的には、次世代において起こるであろうアトツギ問題や、誰にも管理されない無縁墳墓の増加等、これから大きな問題へと展開することは充分に予想できる調査結果ではあった。
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