本研究は、自己決定権論の総体的考察を課題にする。2カ年計画のうち2001年度の課題は、(1)成年後見制度について各国における最近の新動向を比較検討すること。(2)杜会福祉制度における「自己決定」の重視について北欧で新展開を考察すること。(3)刑事法における自己決定論に注目すること。(4)歴史学における「パラダイム転換」について、上記の視点から考察を進める。(5)y社会学・哲学におけるポストモダニズムの議論を関連づけて考察すること、であった。 本年度は、まず、自己決定権の最新状況を判例にも着目しながら捉えるとともに、その理論化作業の現段階についてまとめようとした。また、上記の5つの論点の考察については、重点をとりわけ(2)(4)(5)にを置いて作業を進めた。これらの考察の成果の一部は、近刊の『法哲学講義』の中で、自己決定権を理論的および歴史的に考察する箇所において、以前の論述を内容的に充実化させる形で具体的に利用した。(1)と(3)については、民法学(親族法)や刑法学の基礎をもしっかり押さえなければならないので、その途上で年度が終わってしまった。 全体として必要な文献もかなり調ってきたので、来年度は、作業を全般的に進め論考にまとめるつもりである。
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