1 埋蔵文化財の保護は、包蔵地の土地所有者等の犠牲の上で行われてきた。埋蔵文化財は国民的財産であることを理由に、土地所有者等に犠牲を強いてきた。このような状態の下では、犠牲を嫌う土地所有者等によって埋蔵文化財の破壊が進むことは必然である。 実態調査によれば、文化財保護法上には損失補償の規定が置かれているものの、現実には損失補償がなされた実例はほとんどない。法律上の補償制度が全く機能していないのである。これでは、埋蔵文化財を含めての文化財の保護は、将来的にきわめて困難な道を歩むことになる。文化財保護法上の損失補償規定を積極的に活用し、また、不備については立法論的な手当てを施すことにより、適切な損失補償を行うことによってこそ文化財の保護が有効になされるというのが、本研究によって得られた成果の第一である。 2 埋蔵文化財の保護のためには、土地の買取りが最も有効である。しかし、予算措置が不十分であるために、買取りはあまり進んでいない。限られた予算の中で買取りが進まないのは当然のことであるが、これでは依然として、土地所有者等の犠牲の上でしか文化財の保護は行われないという悪循環に陥ってしまう。 買取りの実績が少ないとはいえ、少しずつ増えている。その場合には、任意買収がなされることになるが、任意買収といえども、公共のために土地を買い取るのであるから、その対価は「正当な補償」でなけれげならず、また、情報公開制度を通じて開示の請求があれば、その対価(補償額)を開示すべきである。これが本研究の第二の成果である。
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