1 人権としての教育を受ける権利の保障および侵害の状況の検証という点に焦点をあてて、「分権」「選択」という教育改革の手法を取りいれようとしている地域の取組を選び、公教育学校法制の実態および教育改革の有り様を検証するために、日本およびアメリカの若干の州を調査した。これらに関心ないし実績のある研究者への面接調査と教育改革の担当行政職員への面接調査を行い、かつ、日本ではアメリカの教育行政研究者等との研究会に参加して、意見交流を行った。 2 日本では地元の「土佐の教育改革」と愛知県犬山市、埼玉県鶴ヶ島市の「地域に根ざした教育改革」に着目し、そこで進行している教育改革の内容、手法を調査対象とした。これらの調査研究等から地域の教育の課題、問題を法的権利の保障の不十分さ、侵害の救済に対する法的取組は、鶴ヶ島市を除いては弱く、「法化」による教育改革ひいては教育改革における法の役割の小さいことをあらためて知る。「法律、条例、規則」による教育を受ける権利の保障の理念の検討も自覚的にはなされていない。 3 9月4日から28日の間にインディアナ州(2週間)、ケンタッキー州、コロラド州、カリフォニア州で教育庁、大学を訪問し、教育改革の内容、手法、主体の多様性を知る。なかでも、教育裁判において教育を受ける権利の実証的な検討深化が進み、裁判と教育改革とが密接な関連を持っていることの研究の必要性を知る。ケンタッキー州の教育改革の例では、教育を受ける権利の不十分さの州憲法違反とされ、それが憲法改正となり、かつ教育改革法制となっている。その意味では、教育改革の「法化」は依然として、継続している。
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