本研究課題の2年目は、主にオーストラリアおよび日本の教育における「分権」「選択」の実情と法制的構造を解明することを重点とした。 オーストラリアではビクトリア州メルボルン市の学校評議会(School council)制およびニュー・サウス・ウェールズ州シドニー市の学校制度とその選択制の実情と教育法制を焦点にしてヒアリングをほぼ2週間行った。メルボルン市の学校評議員制は、1950年代からの長い歴史をもったもので学校運営に定着しているものであり、アメリカ合衆国の学校参加制度とは若干、異にするもので校長の専門職リーダーシップが基礎にある。シドニー市の学校種別は、シドニー特有のものではなくオーストラリア全般で同様であるが、カトリック教会立学校、政府立学校と独立学校の3つの区分でカリキュラム編成など州の教育統治にそれぞれが参加している。政府立学校には学区がなく、通学交通費が支給されて学校選択が保障されていることが特徴としてある。また、20%以上の就学生を受け持つカトリック教会立学校は、学校選択としては相当の選好率をもっていることが分かる。その実情を当該学校やカトリック教会学校委員会のヒアリングを行い、その実情を調べた。オーストラリアの公教育の歴史からカトリック教会立学校の役割を知ることができた。 日本では学校選択制を一部はじめた品川区と「開かれた学校づくり」に取り組む高知県の教育改革を調査した。 教育改革の比較教育法という視点からみると、昨年のアメリカ、本年のオーストラリアの教育法制を教育改革を例に検討すると、日本の教育改革はその提言の根拠や法制根拠の整備の点で政策策定者の裁量的判断に依存することが多く、教育改革の「法化」(legalization)の弱さが目立つ。
|