本研究課題は、「人権としての教育」「教育を受ける権利」の権利内容およびその実現方法の法的構造を日米豪の比較研究を実態的に解明することである。 アメリカ合衆国・ケンタッキー州の「学校に基礎を置く意思決定方式」(SBDM)は州憲法の「教育を受ける権利」保障の欠如の違憲判決によって採用された学校統治であり、有力な教育保障の制度設計である。ケンタッキー州のそれは、親の参加を重視した学校統治の仕組みであり、その事によって親の意思を反映させ、公立学校を学区ごとの「選択性」とすることにしている。学校統治の法制度として学校レベルの諸規則類も法的ルール化が整備されている。 オーストラリア・ビクトリア州とニューサウスウェールズ州での就学生徒数で20%を超えるカトリック教会立学校の公教育に占める役割に着目し、その教育の「質」保証の仕組みと「教育を受ける権利」の内容を検証できた。また、カトリック教会学校委員会の公教育法制における位置付けも解明でき、その質的保証システムも明らかにできた。 日本において中央政府優勢の管理システムから分権、選択などが唱導されているが、政策的裁量の増大にすぎず、「教育を受ける権利」保障の法的自覚、構造化は弱いと評価できる。 国際的教育機関による教育保障の評価指標、提唱されている方式では、「教育を受ける権利」「人権としての教育」は共通のものとして重要視されているので、それを法的権利として前提にすることが比較研究には不可欠であろう。わが国の教育改革がそうした法的ないし制度的指標に耐えうるものにすることの課題がある。
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