本年度の重点研究領域は、住環境整備に関する基幹的制度の比較法研究である。研究の初年度にあたり、既成市街地開発が日独で近年、中心的課題となってきた背景を探ることとした。両国の法制度の発展史を含め、現行制度に関し、とりわけ都市計画規制と集団規定の関係についても研究を深めた。国家法と自治体条例をトータルに視野に入れた都市法システムの全体像に関し、分析を進めたことが本年度の実施成果である。 海外研究の部分については、具体的には、ドイツ法に関して、地区詳細計画のほか、住環境整備のために自治体が近年、条例でどのような手法を制度化しているのか、計画と協定の融合をいかにして図っているのかなど、ドイツの研究機関で調査を行った。自治体組織・自治体環境政策に詳しいギーセン大学のトーマス・グロース教授のほか、建築法の研究家として著名なヴィンフリート・ブローム教授(コンスタンツ大学)、シュミット・アスマン教授(ハイデルベルク大学)と面談の機会を持った。 上記の海外調査を受けて、本年度の後半では、日本法に関する研究に重点を置くこととした。具体的には、日本の既成市街地における地区計画制度や建築協定制度の現状を把握するため、福岡市等の担当部局を訪問したほか、実務に詳しい福岡県の不動産鑑定士やその協会とも面談の機会を持った。また、研究の進展状況に合わせて、東京大学の研究者と意見交換の機会をもつこととした。自治体行政の実態調査のため、先進的な取り組みをしている自治体を対象に、市民参加に関する新規条文を盛り込んだ条例を対象として、条例に関する資料請求も行った。
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