本年度は、これまで実施してきた比較法研究やわが国における自治体レベルの先進施策の実態研究を整理し、三か年計画の研究をとりまとめた。具休的には、第一に、市民参加を具体化するための法的手法と、それに関する手続論・要件論に関して、理論研究を総括した。ここでは、街作り計画と自治体総合計画に、多くの共通課題がある点も確認された。第二に、こうした市民参加型の施策遂行が、自治体計画、建築計画とどのような関係にたつのか、またこれら計画にいかなる要請をもたらすのか、という点に関しても考察を進めた。これは、換言すれば、参加制度と計画制度との融合の試みである。とりわけ、自治体が条例等を駆使して先進的な取り組みをしている事例を素材として、その分析に取り組んだ。第三に、住環境整備に関する行為形式に関して、税財政上の仕組みとどのような形で制度連携可能なのか、という点についても、分析を進めた。これは、換言すれば、街づくり施策と税財政制度との融合に関する試みである。 以上の三点にわたる理論研究を統合すると共に、実務の用に役立つような制度設計提案にも着手している。ここでは、計画策定への市民参加、計画の進行管理、計画の実効性確保、計画の評価システムを構築する重要性が確認された。こうした日本法に関する研究成果を海外の動向と比較検討すると共に、考察の結果を、2003年9月に九州大学に来日されたコンスタンツ大学法学部教授のハンス・クリスティアン・レール氏と討議する機会を持った。このことを通じて、行政計画に代表される行為形式の発展などにおいて、日独に多くの共通の発展傾向が存在することも確認できた。 本年度は最終年度にあたり、本研究の成果が学界のみならず行政実務に対しても意義を持つことから、報告の末尾に挙げたような論文を通じて公表の機会を持つよう努めた。
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