本研究の目的は、日本の肉牛会社(肉牛の育成から精肉までの一貫生産体制)が、生産コストを下げる戦略でアメリカに進出して牧場経営を開始したところ、日本では法的に許容されている行為が、アメリカの環境法違反とされ刑事罰と懲罰的損害賠償を課せられるところとなったという事件を素材にして、アメリカに進出する日本企業にとっての営業リスク管理という観点から、アメリカの環境法を理解しておくこと必要性を検討するというものであった。そして、これとならんで、アメリカにおける環境法違反に対する刑事罰と、州(もしくは連邦)が原告となる懲罰的損害賠償の法的仕組み・実際の運用についても検討の対象とした。 研究の初年度、アメリカでの現地調査を予定していたが、9・11テロの影響で日程的に不可能となり、その後も現地調査が困難な事情が発生し、本研究では上記の裁判記録等を基礎にしながらの文献研究が中心とならざるをえなかった。ただし、この会社の法務担当責任者で、本件の裁判の責任者でもあった本件会社の関係者から、かなり密度の濃い聞き取り調査をおこなうことができた。 本件会社の信用ということもあり、現在、作成中の研究成果の報告では、若干、抽象的な表現による研究報告にならざるをえなかった。成果の報告では、まず、本年6月に「アメリカにおける環境法違反に対しての刑事罰と懲罰的損害賠償」についての研究報告を発表する。そのうえで、本件研究の対象とした事件の会社の法務部と協議したのち、事件の概要の紹介とともに、営業上のリスク管理として環境法の理解が必要であるとの研究成果を、「環境法と営業リスク」というタイトルで公表する。
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