研究成果報告書は、従来の監督システムの分析を行った「90年法の下における民間部門を対象とした監督システム」(第1部)及び、現在及び将来の監督システム構築の基礎となるデータ保護法制の分析を行った「連邦データ保護法の改正とデータ保護法の『現代化』」(第2部)という構成をとっている。 第1部では、ドイツ連邦データ保護法(90年法)における、民間部門の個人情報保護の実効性を、特にその監督制度に着目して考察した、当該制度が、事業者の自己コントロールと監督官庁による外部コントロールという二重構造を採用している点、外部コントロールが強化されてきている点などを指摘し、ドイツ法における民間部門の個人情報保護の考え方を明らかにした。また、制度研究にとどまらず、監督制度の実態まで考察し、制度の有用性とその限界を、とくに監督機関の権限との関係で、明らかにした。 第2部では、(1)改正ドイツ連邦データ保護法(2001年5月)の主要な改正事項を、1995年のEU指令の転換にともなうものと、その他-「現代化」の要求に応えるもの等-とに分けて検討し、あわせて、(2)「次の改正」に向けての政府部内の準備作業の一端を紹介した。具体的には、連邦内務省の編集にかかる鑑定書「データ保護法の現代化(Modernisierung des Datenschutzrechts)」を中心に検討した。この鑑定書は、連邦内務省の委託をうけて、3人の大学教授によりまとめられたもので、次の連邦データ保護法の改正に決定的な影響を与えるものと考えられる。 以上により、これまでの監督官庁による、集中的、公的コントロール(監督)から、個人データを取り扱う民間企業による、分散的、自主的コントロールへのシフトが進みつつあることを明らかにした。
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