研究概要 |
1.本研究の目的 本研究は,カンボジアのポルポト派(クメール・ルージュ)時代に行われたと云われている大量虐殺行為に関する裁判のあり方に注目して,その責任追及及び裁判に至るまでの過程を検証することにより,国際人権法人道法秩序の形成過程を評価しようとするものである。 2.特別法廷の設置の現状との関係 元ポルポト派の裁判のための特別法廷は,2000年夏の国連とカンボジア政府との間の合意を受けて,2001年中にもカンボジア国内に設置する運びとなった。2001年中に設置に向けた国内法の整備が行われることになり,実際に2001年夏にカンボジアでの国内法が成立した。しかし,その後今日に(2002年3月)に至るまで,カンボジア政府は,特別法廷の開廷を遅延させ,国連の協力体制は整っていない。法廷設置作業は遅延しているが,本研究においては,大量虐殺行為と国際法の関係を整理して,国際人道秩序の模索を検討することにあるので,特別法廷設置に関わりなく議論の推移を含めて考察の対象となる。 3.研究の現段階 本年度は,カンボジア特別法廷の設置の準備作業に関する資料収集と調査に取り組んできた。本年度中の具体的な作業としては,カンボジアのポルポト時代から1990年代の国連PKOを経て国家が再建されるまでの過程について資料収集(主として,英語文献)を行った。2002年2月に10日間の日程により,米国のコロンビア大学図書館(ニューヨーク市)及び連邦議会図書館(ワシントンDC)等において幅広い調査を行うことができた。これらの作業に基づく具体的な成果は未発表であるが,これらの資料の検討と分析を急いで,大量虐殺行為の国際法上の位置づけに関する歴史的展開過程とカンボジアの虐殺事件の経緯を次年度中にまとめるようにしたい。
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