研究概要 |
1)昨年度末にニューヨーク及びワシントンでの資料調査を行ったことを受けて、その機会に渉猟した資料等を整理し、読んでいる。 2)大量虐殺と国際法との関係について、Steven R.Ratnerによる"Accountability for Human Rig hts Atrocities in International Law, Second edition," Oxford University Press, 2001を読み、カンボジアのポルポト派裁判の国際法的重要性を再認識した。研究の基礎資料として活かしたい。 3)Howard J. de Nike, John Quigley and Kenneth J. Robinson, "Genocide in Cambodia," University of Pennsiylvania Press, 2000を読み、1979年にカンボジア人民革命法廷が設立され、ポルポト派裁判が行われ、多くの証言、証拠が提出されたが、実効性のない裁判に終わっている。このことからも、国連との協同による裁判の実施の必要性が導き出される。 4)国際関係におけるグローバル・ガバナンス理論からポルポト派裁判の在り方を追究することにより、カンボジア裁判の国際秩序の形成という観点から重要であるとの認識を持つようになった。ポルポト派裁判がグローバルガバナンスの実現あるいは「人間の安全保障」という観点から要請される課題であることを国際関係理論の面からも論証していく方向性を固めていきたい。 5)2002年10月に「弁護のための国際人権法」を上梓することができた。国際人権法における非人道的処遇の禁止という基本的な視点から、わが国刑務所等で使用されている革手錠の禁止を主張した。刑務所における事件が露見し、カンボジアだけではなく、わが国内においても、非人道的処遇の禁止という国際基準の確保は重要であるという持論が論証されたように思われる。
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