異なる設立準拠法に基づく法人間における合併や株式交換については、「組織法上の問題であるから」という一事をもって、これまで学説上もこれを否定的に解するものが多数であった。しかし、かかるドグマの出自への疑問から始まった本研究によって、合併や株式交換も、(「取引法上の問題であるから」という理由でこれまで国境を越えての実行が可能とされてきた)営業譲渡と同様の抵触法的法構造を有することが解明された以上、今後は、少なくとも法技術上は可能であるといわざるをえなくなったと思われる。 しかし、そうであるからといって、実務上のニーズがどこまであるか、税法上の恩恵が受けられないなどのデメリットがないのか、我国とうまくマッチするような会社制度を有する国がどれだけ諸外国にあるのか、合併や株式交換の際の企業情報開示は具体的にどのようにすればよいのか、これを一般的に認めないことにより国際法上の問題が生じないのか、事後的に紛争が生じた場合にうまく解決が可能なのかといった諸問題が解決されなければ、学問的には可能であるとしても、実際に用いられることはありえないと考えられる。そこで、本研究では、上記に関して知見を有する実務家を中心とした専門家と定期的に会合やインタビューの機会を持ち、国際的な企業合併を巡って生じ得るそうした問題を整理し、それに対する解を探った。 また、そうした成果を下記の論文として公表して世に問うた上で、関係する専門家を約百名集めたワークショップを開催し、本研究の成果の再検討の機会を持った(その成果は、商事法務1635号(2002)10-30頁、1636号(2002)28-49頁に掲載されている)。
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