本研究においては、「都市に生きる」ということがもたらすいくつかの問題を、主として私法的観点から分析することを試みた。とりわけ都市生活の「ソフトな側面」「都市における市民生活のあり方」に焦点をあわせ、具体的には、近隣関係における問題(相隣関係・区分所有など)、現代家族に関する問題(新しい家族の形態、高齢化・少子化など)、各種の団体活動・奉仕活動に関する問題(生協・自治会・PTA、スポーツ=文化団体、市民運動、無償契約・事務管理など)をとりあげて、これらを素材に、旧来の地縁・血縁とは違った「都市における人と人との新たな絆」を支えるために、民法・民法学が何をなしうるかを検討することを課題とした。 この計画は、もともと申請者の構想する「生活民法」と重なりあうものであり、「消費生活」「家族生活」を視野におきつつ、「社交生活」とも呼ぶべき第三の領域の存在を抽出することを目的としていたが、このような観点からの検討の成果は、平成14年度末に著書『生活民法入門-暮らしを支える法』としてまとめることができた(「都市私法」という視点との関連については、結章「生活民法、これから」で触れている)。なお、これには方法論的な補足が必要であったが、この点に関しては、平成15年度の半ばに論文「日常生活の法的構成」UP2003年9月号10月号をとりまとめた。
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