本年度は、内外の文献・資料の収集と分析に当たり、研究の対象としては、連結企業の内部統制の中で連結会計がいかに整備されているか、また、整備されるべきかについて、監査役や会計監査人の役割を中心として、日本法とイギリス法の比較法的な研究を予定していた。しかし、わが国の立法史上初めてであるが、半年間に3回もの商法改正が実現したため、会社法の基本的な枠組みに多大な変化が生じてしまった。しかも、平成 14 年 2 月 13 日、本年の通常国会に提出すべく法制審議会による「商法等の一部を改正する法律案要綱」が確定し、その中では、さらなる大改正が現実のものとなってきた。ことに、要綱案のなかでは、本研究課題に直接関連するところとして、商法特例法上の大会社についての連結計算書類制度の導入が予定されている(要綱案第一三参照)。そこで、これらの変動に対処するため、一方で、当初の予定通りに本研究課題に関する内外の文献の収集と分析にあたるとともに、他方で、本研究課題の基盤となる「企業会計・開示・監査の連関」の理論を改正商法のもとで再構築することに努めた。その結果、本年度の研究成果としては、日英の監査役制度を比較した英文の論稿や経済誌に監査役制度の独自性を主張した巻頭論文を執筆し発表したほか、近日公刊予定の著作(共著)の中で「企業会計と監査」について詳述し、上記の連関の理論を進展させた。そのほか、新たな研究発表の手法と場を模索した結果、連関の理論をはじめとした企業会計法に関わる私見を広く一般に提言するため、インターネット上にホームページを開設した(「西山芳喜の監査役制度論(http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/2105/)」)。なお、本年度は、連結会計自体に関する比較法的研究の成果を発表するに至っていないが、研究はすでに着手されており、次年度以降に発表予定である。
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