研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き、内外の文献・資料の収集と分析に当たり,研究の対象としては、連結企業の内部統制の中で連結会計がいかに整備されているか,また,整備されるべきかについて,日本法とイギリス法の比較研究を予定していた。しかし,平成14年5月商法改正が成立し,同改正により,わが国の立法史上初めて,委員会等設置会社が制度化され,会社法の基本的な枠組みに多大な変化が生じるとともに,本研究課題に直接に関連する事柄として,商法特例法上の大株式会社についての連結計算書類制度が導入された。同改正の実際の適用は平成14年度の決算に係る定時総会の終結時以降であるが、これらの変動に対処するため,一方で,当初の予定通りに本研究課題に関する内外の文献の収集と分析にあたるとともに,他方で,本研究課題の基盤となる「企業会計・開示・監査の連関」の理論を改正商法のもとで再構築することに努めた。本年度の研究成果としては,この改正が商法会計にもたらす影響に関して,連結計算書類制度を中心に研究を深め,数本の論考を執筆し発表したほか、株主代表訴訟における監査役の役割について,被告取締役側への補助参加問題を取り上げた論文を発表した。また,今年度当初に上梓した著作(共著)を今回の改正に準拠し,かつ本研究の主題である連関の理論を明確化するため,「企業会計と監査」について早速に書き改め,近日中に公刊の予定である。本年度においては,この改正法上の論点の明確化に力をそそいだため,連結会計自体に関する比較法的研究の成果を発表するに至っていないが,研究はすでに着手されており,次年度以降の課題とする。なお,平成15年4月1日付けで九州大学大学院法学研究院教授として転出することが内定したため,研究拠点の移動に伴う各種の障害が予想されるが,関係機関のご協力とご支援を得て研究の進展に支障のないように務める所存である。
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