研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,内外の文献・資料の収集と分析に当たり,連結企業における内部統制システムの中で連結会計がいかに整備され,また,整備されるべきかについて,日本法とイギリス法の比較研究を予定していた。しかし,平成14年に成立した商法改正が平成15年4月1日施行され,わが国の立法史上初めての委員会等設置会社が誕生するとともに,会社法の基本的な枠組みに多大な変化が生じた。また,本研究課題に直接に関連する事柄として,平成14年の営業年度の決算に係る定時総会の終結を契機として,大会社についての連結計算書類制度が本格実施の体制に入った。また,平成17年5月1日から施行される社外監査役制度の厳格運用に備えて,各論的な問題の検討に入った。これらの変動に対処するため,一方で,本研究課題に関する内外の文献の収集と分析にあたるとともに,他方で,本研究課題の基盤となる「連結会計・開示・監査の連関」の理論を改正商法のもとで再構築することに努めた。本年度の研究成果としては,この改正が商法会計および証券取引法会計にもたらす影響に関して,連結計算書類制度や社外監査役制度を中心に会計および証券取引法会計にもらたす影響に関して,連結計算書類制度や社外監査役制度を中心に研究を深め,数本の論考を執筆し発表したほか,企業会計規制全体の基礎となる商業帳簿制度について再検討する機会を得た。また,昨年に上梓した著作(「企業会計と監査」『会社法』(共著)所収)を今回の改正に準拠し,かつ本研究の主題である「連関」の理論を明確化するため,第二版として書き改めた。本年度においては,この改正法関連の論点の明確化に力をそそいだため,連結会計自体に関する比較法的研究の成果を発表するに至っていないが,研究はすでに着手されており,次年度以降の課題とする。なお,平成16年度の公認会計士試験第二次試験(商法)試験委員を拝命したため,研究時間の確保に一層の努力を要するが,研究の進展に支障のないように務める所存である。
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