研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,内外の文献・資料の収集と分析に当たり,連結企業における内部統制システムの中で連結会計がいかに整備され,また,整備されるべきかについて,日本法とイギリス法の比較研究を予定していた。しかし,前年に施行された商法改正の実務段階に入り,大会社についての連結計算書類制度が本格実施の体制に入ったため、理論面のみならず実務面からも多数の提案と実例が生じたため、その分析および検討に時間をとられる結果となった。また、本年5月1日から施行される社外監査役制度の厳格運用に備えて,各論的な問題の検討が必要となった。加えて、平成13年の「中間試案」以来懸案であった「会社法制の現代化」のための作業が進行し、昨年12月には「要綱案」として結実し、本年には立法化される見通しとなった。これに伴い、本研究テーマに関しても、新たに検討すべき課題が追加的に生じた。 本年度は、これらの変動に対処するため,一方で,本研究課題に関する内外の文献の収集と分析にあたるとともに,他方で,本研究課題の基盤となる「連結会計・開示・監査の連関」の理論を改正商法のもとで再構築することに努めた。本年度の研究成果としては,この改正が商法会計および証券取引法会計にもたらす影響に関して,監査役制度を中心に研究を深め,論考を執筆し発表したほか,本研究の主題である「連関」の理論を明確化するため,企業会計規制全体の枠組みについて再検討する機会を得た。本年度においては,この改正法関連の論点の明確化に力をそそいだため,連結会計自体に関する比較法的研究の成果を発表するに至っていないが,研究論文の執筆はすでに着手されている。なお,本年度は、法科大学院の開校により、その専任教員としての校務が加わったほか、公認会計士試験第二次試験(商法)試験委員としての公務のため,研究時間の確保に一層の努力を要したが,研究の進展に務めた。
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