本研究は、平成13年度からの4年間にわたって実施された。当初の計画では、内外の文献・資料の収集と分析を通じて、連結企業における内部統制システムの中で連結会計がいかに整備されるべきかについて、連結会計・開示・監査の連関の視点から、日本法とイギリス法の比較研究を予定していた。しかし、予想外に早く立法作業が進展し、平成13年に入るとすぐに商法改正が成立し、翌14年からは、商法特例法上の大会社についての連結計算書類制度が実施の体制に入った。そのため、理論面のみならず実務面からも多数の提案と実例が生じたため、その分析および検討に時間をとられる結果となった。また、平成14年には再度、商法が改正され、大会社の社外監査役の選任資格に関する規定が改められたため、実務的な問題の検討が必要となった。加えて、平成13年以来懸案であった「会社法制の現代化」のための立法作業が進行し、本年には立法化される見通しとなったことに伴い、本研究テーマに関しても、追加的に検討すべき課題が続出した。その意味で、本研究では、制度の沿革や外国の法制に関する研究に十分な時間をさく余裕はなかった。むしろ、リアルタイムで進行する社会的な変動に対処するため、本研究課題の基盤となる「連結会計・開示・監査の連関」の理論を改正商法のもとで再構築することに努めざるを得なかった。そのため、現在までの研究成果としては、これらの改正が連結会計制度にもたらす影響のほか、監査役制度が果たすべき役割に関する研究を深めるにとどまった。もっとも、本研究の主題である「連関」の理論を明確化するため、企業会計規制全体の枠組みについても再検討する機会となった。なお、授与された研究資金により、連結会計制度全体に関する制度論的ないし比較法的研究のための資料の収集と分析は着実に進展しており、近い将来、その研究成果を発表できるものと思う。
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